◇◆ Formula 1 Test at Silverstone Circuit ◇◆◇ 19/Apr./2001


 いざ、シルバーストーンへ。_

このときのF1テストは、ちょうどイースター休暇の真っ最中だった。直前に南東イングランドへの小旅行を敢行してきたばかりで、毎日がのんびりと流れていた。しかし、F1のテストに出掛けるとなれば話は別だ。朝まだ薄暗いうちからサンドイッチと果物を用意して、いそいそと家を出、コーチステーションに着く頃には、だんだんと胃のあたりが緊張してきた。
シルバーストーンには、一度しか行ったことがない。昨年の秋、今はなき無限ホンダのスタッフの好意で、最後のテストに招待してもらったのがそれで、つまりすべて自前で手配しての単独行は、これがはじめてなのだ。
やがてコーチが発車し、座席におさまって車窓を流れる景色を見るほかすることもなくなると、心臓がばくばくいってどうしようもなくなった。『緊張で押しつぶされそう、という言葉があるけれども、どちらかというと、いっそ押しつぶされて死んだら楽になれるのに、などと思ってしまう』、と、当時の手帳にある。
これから我が身に起きるであろう様々なことが、次から次へと脳裡を過ぎる。今回はパドックに知り合いはいないから、頼れるものは自分ひとりだ。だけど、行き着く場所は前回と同じシルバーストーンのパドック。出掛けに確認したかぎりでは、今回参加しているのは7チーム、なかなかの大所帯のようだ。…ラルフ、来てるかな?
懐かしさと、不安と、期待と、そして興奮とがごっちゃになって、息をしているのも辛い。メモをとる手が、情けなくも震えていた。


 知らぬが花?_

さて、パスを持っておおっぴらにパドックへ行くなど未知の経験である。もちろん、事前に知人やファンクラブの主催者に確認は取ったのだが、両者とも自家用車(あるいは社用車)以外でのサーキット入りなどしたことがなく、果たしてタクシーでどこまで行かれるのか、皆目判らなかった。
コーチステーションで掴まえたタクシーの運ちゃんは、トルコ人のお兄ちゃんで、新人さんらしく「シルバーストーン?場所は知ってるけど、入ったことはないなぁ…。ま、行ってみれば何とかなるでしょ!」(笑)
それでとにかく行ってみたら、本当に何とかなってしまった。私がちらりと見せたパスに、正門の警備員さんひとこと、「はい、通っていいよ」
なぁんだ、と拍子抜けしつつ、前回の記憶を辿ってパドックまでナビをする。パドック駐車場のところで降ろしてもらい、タクシーのお兄ちゃんは「んじゃ、楽しんでおいでね!」と手を振って帰っていった。
しかし、ここで後で判明した事実。タクシー等公共の乗物は、パドックまで入ってはいかんのです。正門のところで客を降ろし、客はそこから徒歩で移動しなければならないのです。(後日警備員さんと話していて知ったのですが)
ならば何故、このときに限って我々はパドックまで侵入できたのだろうか。正門の警備員はおろか、パドック駐車場の警備員まで当然の顔をして我々を迎えてくれたのだが。答えは、闇の中である。


 走っていたひとたち_

テストでは、どこかに出走者の名前や参加チームが表示してあるわけではないので、すべての情報は自分で掻き集めるしかない。テストウィーク初日でなければ、たいてい参加チームは前日と同じ。出掛ける前にネットで前の日の出走者一覧をチェックしておけばいい。あとは誰が走っているかだが、これはもう自分の目でたしかめるのがいちばん確実だ。しかしパドックからはコースを見ることは適わない。だから、口コミが大活躍する。気になるドライバーのピット周辺でうろうろしている人は、それがどこの誰であろうが、結局は同じ穴の貉。ファン同士の情報交換は有益だ。
この日のテストに参加していたのは、マクラーレン、ウィリアムズ、ベネトン、BAR、ジョーダン、ジャガー、プロスト。ベネトンとジョーダンがそれぞれ1台体制(ベネトンはフィジケラ、ジョーダンはフレンツェンのみ)なのとプロストがコシェを含めた3台体制だった以外は、レギュラードライバーを起用していた。しかしそのうち、実際に姿を確認できたのは、DC、ラルフ、エディ、アレジの4人のみ。あとはコース上でしかお目にかかれなかった。
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