● ファンの出で立ち。

今回の私は、3日間通して完全デビ応援モードだった。DCキャップは思ったより少なかったので、それなりには目立っていたよう。特にボーダフォンブースでミヒャエル待ちをしていたときには、ティフォシと思しき集団(イタリア人?)に絡まれること絡まれること。

圧倒的に多かったのは、フェラーリとウィリアムズだった。前者が子供とあきらかにラテン系の大人に多かったのに対し、後者は南米っぽい家族連れのほか、英国人カップルでキャップが5番と6番、といったかんじ。マクラーレンよりウィリアムズ色が濃かったのは、やはりシーズンの状況を反映してのことだろうか。
フェラーリは、子供に人気が高かった。あっちもこっちも真っ赤なTシャツの子供が駆け回っている。で、ご両親はマクラーレン(しかもミカ)だったり、ウィリアムズだったり。たまに、デイモン・ヒル帽も見かけた。
コプス内側。まるでどこかのキャンプ場…。
しかし、たぶんきっといちばん多かった恰好は、普通のピクニック・スタイルだろう。男の子(男性含む)の出で立ちにサッカーチームウェア(たぶん地元のなのかな)が多かったのが、英国らしい。
お国柄、と思わず笑ったのは、鳥打帽の中年男性や、M&Sっぽいワンピースに幅広の帽子を被った老婦人や、ステッキがないのが不思議なくらいかっちりとツイードのジャケットを着こんだ老紳士が闊歩していたこと。
…ここは休日のハイドパークですか。(笑)

ピットレーンスタンドの裏に発見。 フラッグの数はわりと多かったように思う。年季の入った大旗をだいじそうに担いだファンがあちこちにいた。どこから入手したんだと首を傾げるデザインもちらほら。
色褪せた巨大なSt.アンドリューズ旗を担いだお兄ちゃんに、購入先を訊いてみたが、本人も定かではなく、「スコットランドなのは確かだけど」。…じゃあ買えませんね、とこちとらがっかり。(幸いロンドンに戻ってからみつけた)
たまたま私のいたスタンドはどこも旗を振るひとがいなかっただけかもしれないが、旗に視界が遮られるというトラブルにはでくわさなかった。(持ち歩くときははためかないよう抱えこんだ人が多かったです)


● これぞ英国風?

英国人の観戦姿勢をひとことで表すなら、マイペース、だ。あまりのマイペースっぷりには、呆れるをとおりこして感心してしうほど。とくに多かった人種は以下の2種類。
いつどこでどんなクルマが走っていようと、1) 昼寝をする、2) パブ・スタンドに齧りついてひたすらビールを煽る

サーキット中あちこちで見かけたパブ・スタンドは、ちゃんと樽出しにガラス製のパイントグラスでエールの種類もそろっている、コンパクトだが本格的なものだ。パブ抜きには英国人の生活は語れない、その象徴のような光景。実際、朝っぱらからスタンドには人が並んでいた。
駐車場でのバーベキューも恒例行事。バーベキューコンロを持ち込むのは鈴鹿も一緒だが、これが一面の芝生の上で広々とスペースが取れて数家族で火を囲む、となると雰囲気は贅沢このうえない。正直、羨ましい。
極めつけは、決勝で隣席になった30代後半くらいのカップルだった。男性がクーラーボックスをぶらさげていたので、缶ビールでも入っているのかと思いきや、出てきたのはフルボトルのシャンパン。しかも、足の細いフルートグラス付。唖然と見つめるなか、ふたりは悠然と飲みはじめた。ちなみに、レースの始まる直前の話である。

セッション中にちゃんと見ているファンたちは、普通に座って、比較的おちついたふうだった。
中には(私のように)メモとペンを持ってなにやら書きつけている人もちらほらいて、どうやらタイムやラジオのコメントらしい。どこにでも似た行動をとる人はいるということだろうか。でも、そういう観戦の仕方をしているのがぱっと見たいしてF1に興味なさそうなおばあさんだったりするあたりが、やはり英国らしい。


●地元の応援。

ベケッツ。(ピント外した…)土曜日のフリー・プラクティスのときはインフィールドセクションに陣取っていたのだが、たとえ人ごみでコースが見えなかったとしても、彼が来たのだけは確実に判った。
鳴り響くホーンの音、湧きあがる拍手、翻るSt.アンドリューズクロス。口々に名前を呼ぶ声も聞こえた。Tシャツやキャップの数が少なかったので、意外な反応だった。
たとえばイタリア人がフェラーリにのめりこんだり、ドイツ人がミヒャエルのファンをするのとは、たぶん質が違う。あれほど情熱的ではなく、たとえば見守る温かさ、とでも言おうか。何かを期待するのではなくただあるがままを受け入れているような。
デイビッドがデイビッドであるがゆえに、人々は旗を振る。彼が彼であるかぎり、無条件に声援を送る。
なんだか無償に嬉しくなった。


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