金曜日 10/11


座席いろいろ―ダンロップ〜逆バンク 

午後のセッションは自由席へ。
今年のお目当ては、ダンロップ〜デグナーだった。去年TVで予選を見ていて、ミヒャのここの走りに鳥肌がたったからだ。強烈な横Gをぎりぎりのところで踏ん張ってぐいっと捻じ曲げていくような走り。イン側からでは見難いかもしれないけれど、いちど生で見てみたかった。

しかし、あまりに気持ちのよすぎる改修っぷりに相方ともども呆然とする羽目に(苦笑)
コース下を突っ切る通路は広くなり、舗装されて歩きやすくなったが(以前は草叢の一本道というかんじだった)、階段を上りきったところでちょっと立ち尽くす。ダンロップの見晴らし、だいぶ悪くなった気がするんですが…。
その時点で、デグナーまで歩いていく気力は失われたと言っていい。昔の、こんもり盛りあがった丘に人々が張りついてる光景、好きだったのになぁ。
勝手知ったる逆バンクも、がらりと様相を違えていた。ランオフエリアが広がって、代わりに自由席の斜面がきつくなった。そのかわり整備はきちんとされていて、木組みで段々になっているので、斜度はあっても以前より座りやすい。
改修前はただの斜面のままだった。98年、雨上がりのぬかるみに無理やりシートを敷いて陣取ったが、ずるずると前に滑っていくのにはほとほと参ったものだ。
きれいになったな、というのが全体的な印象。観戦者としては嬉しいが、ちょっと寂しい気分もなきにしもあらず。英国のサーキットはコース以外は荒地みたいなもので、泥濘や草を踏み分けて観戦していたから、自分が場違いな気がしてしまう。
もっとも、そんな感傷を口にするのも、指定席を確保した身なればこそだろう。

昨夜S氏に聞いたとおり、逆バンク〜ダンロップの攻略法は、以前とやや変わったようだった。ダンロップへ向けて坂を駆け上っていくラインは、さほど面白いものではなくなった。セッティングさえ決まっていれば、労せずしてクリアできそうだ。(S氏の話では、テレメトリーではほぼまっすぐに抜けていけるそうだ)
ダンロップの抜け方はキツくなったという話だが、それはここ(逆バンク)からではちょっと判らない。
逆にトリッキーになったと感じたのは、逆バンクへの入りからカーブの頂点までだ。セッティングが決まらないまま攻めると、頂点でずるりとリアが流れる。それを抑えようとすればタイムが落ちる。
下位チームはかわいそうなくらいこの堂々巡りに嵌っているようだった。比較的スムーズに抜けていくのは、ルビーニョ、JPMで、ラルフはスピードは速いのだが、くく…っと少々強引に曲がっていく。
いちばん面白い走りをしていたのは、マクラーレンの2台。なにしろ、入りのスピードが他に比べて桁違いに速い。午前中はお世辞にも調子がよさそうには見えなかったのに、たいした変わりっぷりだ。殊にキミは、顔に似合わぬ豪快な走りで幾度もテールを滑らせながらかっ飛ばしていった。

パドック客向けスタンドが邪魔なものの、眺めは絶品。
ぐるりと目を転じれば、最終コーナーからピットロード、ピット出口〜1、2コーナー、S字と、東コースがそっくり覗ける。
それだけに、視界がカットされてしまうのが惜しいのだが。
かつて、ここをすぅ…っと駆け抜けていくマシンの後ろ姿は、とてもうつくしかった。

定点観測には最高だけれど、撮影には向いてないとみえ、カメラ組は付近に一切いなかった。

セッション中、土手の上を彷徨いながら、予選の観戦ポイントを探した。
頼りは自分の勘。前にも居座ったことのある場所だから、だいたいの見当はつく。あとは、望遠レンズを構えた集団などもいい目印になる。今回は改修後初ということで、カメラの群れをかなり参考にさせてもらったが、最終的にはまったく違うところに落ち着いた。
とくに面白いと思ったポイントは2箇所。なかでも、G席真横の土手の上は、うまくすればピットロード出口からぐるっと回ってS字まで望めるし、逆バンクの抜け方がよく判るし、電光掲示板も見やすく、気に入った。
難を言えば、オーロラビジョンが見えないことか。G席用のは遠いし見難い。もっと逆バンクの中央寄りなら、パドックスタンド用のオーロラビジョンが真後ろに聳えているのだが。
逆バンクにこだわらなければ、G席横のS字側斜面も面白かった。各車のS字攻略がよくわかるし、なによりこちらはオーロラビジョンがよく見える。私は柵に半ケツで見ていたが、土手組はしっかり簡易チェアを持ちこんで、悠々と観戦していた。

  +++

この日、午後のセッションではちっともミヒャエルを見かけなかった。何かトラブルを抱えたのだろうとは思ったが、心配はこれっぽっちもせず仕舞い。
ミヒャエル・ファンの観点で見るなら、鈴鹿は完全なる消化試合だ。いまさら何の心配もいらない。それに、どうせミヒャとフェラーリのこと、明日までには何とでもしてくるだろうと踏んだ。
後日データを見て判明したが、金曜日の周回数18は全ドライバー中最少。琢磨が最多の45周をこなし、ラルフが44周、サロが42周と続く。殆どのドライバーは平均して30周前後。18周というのは圧倒的な少なさだ。
それでも心配しないで済むだけの実績を、無条件の信頼を、このひとは築きあげてきた。

…やっぱり、かわいくない。かわいくはないけれど…ちょっと、恰好いい。
SUZUKA 2002