オーストラリアGPの雑記・追記
March09 2003
 


データ参照>>>f1.tagheuer.com
* 燃料積載量の謎。

すなわち、ミヒャエルの3回目のピットストップは、予定されていたものだったか否か。

私は最初、ミヒャエルのスタート時の積載燃料はそれほど多くない、と踏んだ。予選でJPMに1秒近い差をつけたためでもあるが、新レギュレーションのもつ性質を考慮したゆえだ。
開幕前や予選後の関係者のコメントを見ると、中堅〜下位のチームが予選でできるだけ軽くして上位グリッドを狙うだろう、という予測がとても多い。グリッドで上位に食いこめば、TVに映るから、スポンサーを獲得しやすくなる、というFIAの目論む三段論法を前提にした考えかたである。だから、フェラーリは前を塞がれたくはなかったのではないかな、と思ったのだ。なぜなら、彼らの誇るエースドライバーは、お世辞にもスタートが得意とは言えないから。

エンジン屋の知人は、この意見に真っ向から反対した。F2002の素性を考えれば、ウィリアムズよりフェラーリのほうが積んでいたはずだというのだ。曰く、『タンク半分くらい』。よって、ミヒャエルは最後の給油をしなくても走りきれただろう、と。

予選でのフェラーリの燃料積載量について具体的に触れている記者は、ひとりだけいる。インディペンデントのD.トレメインだ。彼は、ウィリアムズとフェラーリの積載燃料をほぼ同量とみなし、『予選スタート時で、77kg程度』だと書いている。更に『アルバートパークで予選を走るのに必要なガソリンは、約10〜12kg』であり、『2ストップを綺麗に3等分して考えれば、スティント毎に約65kg積むと、もっとも効率的なペース配分が可能』だとも。しかしこれは予選後の彼の予測。レースを見た彼がどのように考えたかは、謎だ。

燃費はそれぞれ違うから、58周走りきるのにどれだけの燃料が必要かは、単純に計算しただけでは出てこない。トレメインの数字を是としても、レースで各車の積んだと思われるガソリンの量はまちまちで、ミヒャエルが2回のピットストップで走りきれたかどうか、検証するのは難しい。
参考までに、知人に某車の燃費を訊いてみたが、あっさり「企業秘密」と言われてしまった(あたりまえか)。


* 『変則2ストップ』だった場合の『?』

知人の見解を容れ、最後のピットストップが完全にイレギュラーだったと仮定する。
彼の情報をヒントに状況を紐解くと、『シミュレーションでは2ストップがもっともリーズナブルに速』く、『第1スティントいっぱいは路面は濡れたまま』だとBS勢は予想していたらしい。そして、路面の乾き具合によって、一回目のピットストップ時期をずらす、というオプションを設けていた。フェラーリも同じ情報を握っていたとしよう。

思ったより早い路面の回復に、たまらずミヒャエルがピットに飛びこんだのが7周目。タイヤ交換とともに少し給油もし、それから22周走って、二度目の給油を行った。このときの静止時間は9.0秒、残り周回は29周だ。ちょうど半分、だが、静止時間からみて、もしもタンクが空に近かったなら、チェッカーまでは到底保たないと思われる。
しかし一方で、燃料がまだ残っていたとすると、ここでピットインしなければならない理由がない。ラップタイムからはトラブルは認められないし、仮に、前をキミに塞がれていたのが気に入らなかったのだとしても、同じ『変則2ストップ』同士であれば、先にピットに入ったほうが負けだ。よもや、キミがフォーメーションラップの後にピットに飛びこんだのを知らなかったというわけでもあるまい。
案の定、キミはピットストップまでの4周を飛ばし、ミヒャエルの前方2秒ほどのところに滑りこむ。ペナルティがなければオーダーに変更はなく、たとえ3回目のピットストップが必要なかったとしても、キミが勝っていた。

ピットインを行うタイミングの的確さでは、これまでフェラーリは他の追随を許さなかった。けれど、このGPでは、どうにもちぐはぐな印象を受ける。
同じようにBSインターミディエイトでスタートし、変則2ストップを採ったザウバーのハインツの場合、6周目に10秒の静止時間でタイヤ交換と給油を済ませたあと、36周目に2回目のピットインを迎える。静止時間は同じく10秒だ。6周・30周・22周という周回配分になる。マシン素性やピットイン時の状況を無視しているから一概には言えぬが、バランス的にこちらのほうがしっくりくる、と思うのは私だけだろうか。

やはりBSでインターミディを選択したBARの2台はというと、当初の2ストップ作戦を思い切った3ストップに切り替えてきた。といっても、1回目はタイヤ交換のみで、実質的には給油は2回。それぞれ25周目と、39周目(ジェンス)および41周目(ジャック)に実施されている。周回配分は、ジェンスが5・20・14・19、ジャックが4・21・16・17。
ここで注目したいのは、ジャックの第2スティントと第3スティントの周回数が、ミヒャエルのそれと被っていることだ。BARの給油時間は、やはり10秒。BARと一緒にするな、とお叱りを受けるかもしれないが、こうしてみると、ミヒャエルの3回目のピットインが織りこみ済みのものだった可能性は、やはり否定しがたいのではないか。なにしろ、彼の1回目のピットストップにおける14秒の静止時間の殆どは、後輪のトラブルが原因で、正味の給油時間は4秒そこそこなのだ。

とはいえ、3回目の給油が絶対に必要だったという決定的な証拠もまた、発見できない。たとえば、ラップタイムだけを比較すると、ミヒャエルが1回目のピットストップを終え、セフティーカーが引っこんだ時点での、ミヒャエルとマクラーレンの2台のペースは拮抗している。多少ミヒャエルのほうが早いが、そこはマシンの差だとしても説明はつくから、このときの両者の燃料積載量は同程度か、ミヒャエルが少々上まわっていた可能性はあるだろう。つまり、それだけの量の燃料を積んで、予選を走ったということになる。
だとしても、ピットインのタイミングに関しては、首を傾げざるをえないのだけれど。


ただ、確実なことが、ひとつある。確実で、私にとってはいちばん核の部分。
それは、ピットストップが2回だったにしろ3回目が必要だったにしろ、ミヒャエルに勝ち目はなかった、ということ。

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