●各ブースとイベント
展示ブースは、ショッピングエリアの隣、最終コーナーからメインゲート(1番ゲート)までの間にまとまっていた。メインゲートを入ってすぐ左手にヴォーダフォン、飲食エリアの向かいにトヨタ、その先へ進むとメルセデス、ジャガー、BMWと続き、BSとミシュランがある。その合間合間に土産物のテントや食べ物の売店が並んでいる。
どのブースも全体にメーカー色の濃い展示で、自社製品のアピールが中心。F1らしきものといえばマシンが1台飾ってある程度、それも配置が中央ではなかったりさえするし、イベントらしいイベントが行われていた様子も、鈴鹿ほどにはなかった。モーターショーの一部が出張してきたようなかんじで、あんまり一般客が見て楽しいものでもないな、というのが印象。
日本ほど、F1だドライバーだと大騒ぎしないお国柄なのかもしれない。仮にそうだとすれば、F1がそれだけ身近だという証拠だろう。鈴鹿形式のインタビューやショーは、もしかしたら毎年1月にバーミンガムで行われるモーターショーのほうが中心なのかも。

展示の内容はさておき、規模やデザインは一見の価値があった。ひとつひとつが、とにかくでかい。土地が余ってるんだなと思わずにいられない(苦笑)
特に印象的だったのはBSの半欠けタイヤとBMWの巨大テント。特に後者は、設営にいったい何時間かかったのやらといらぬ心配さえしてしまうほど手の込んだデザインだった。不可思議だったのが、このブース、日曜日には何故か入場制限をしていたこと。テントの奥にグッズ販売エリアがあって、あまり広いカウンターではなかったので混乱を防ぐため、というだけかもしれないが、ふと、安全のためだったりするかしらとも…(何人以上乗っかるとテントが崩れるとか…何せ英国だからありがちかと。)

ミシュランのブースは展示のほかにステージ上にマシンが2台並べてあって、どうするのかと思ったら、「タイヤ交換競争」というイベントをやっていた。1台に計8人――タイヤ1個につき2人ずつがつき、よーいドンで一斉にタイヤ交換をする。そのタイムが背後の電光掲示板に表示されるという仕組みだ。左右のチームでタイムを競うという単純なものだが、チームのメンバーは司会者が適当に選抜した赤の他人。思わぬハプニングありの意外な協力体制ありの、で盛り上がっていた。
同じようなタイヤ交換体験イベントに、英国滞在時に参加したことがある。ジョーダンF1チーム10周年記念イベント(EJ10)でのことだ。思ったよりホイールが軽いこととか、ガンの反動がかなり重いこととか、大急ぎでやったのに9秒かかってしまう(しかも給油なし)とか、実体験ならではの面白さがあった。鈴鹿でもやってみればいいのにー。…どうですかBSさん?
●ミヒャエル
ヴォーダフォンのイベントを見ることができたのは、まったくの偶然だった。
予選のあと、たまたまふらふらとコースの内側を散歩して、正面ゲート側に出てきた。車はピットストレート裏駐車場に停めてあったから、食事エリアで軽く腹ごしらえでもして、土産を買物して帰ろうか、と話していた、矢先だった。
正面ゲート脇のヴォーダフォンのブースになにやら人だかりがある。いかにも何かが始まるふうで、特に興奮したラテン系ファンの姿が目立った。
「ミヒャエルが来るかもしれない」と思ったのは咄嗟の勘。或いはルーベンスだけかもと思ったが、何せここはヴォーダフォンの母国だ。さらに、オーロラビジョンに映った最前列の警備体勢が、こういったイベント時の警備レベルとしてはかなり高いものだった。可能性は五分、というのが私の試算。連れも同じ判断をしたので、しばしその場に留まることにした。
人だかりそのものが集客効果となり、どんどん人の輪は広がっていく。上背のある外国人に囲まれて、視界はよろしくない。人ごみに揉まれるうちに、イタリア人らしきグループと隣り合わせになった。間の悪いことに私が被っていたのはDCキャップ。いきなり絡まれる(笑)←言いかえしても良かったのだが、面倒くさいので謹んで無視させていただきましたvv
陽射しのなかだいぶ待たされて、いい加減あきらめようかという時分。
果たして、ミヒャエルは姿を表した。パドックから車かヘリかでやってきたらしい。ブースの裏側、つまりサーキットの外側から、舞台袖に出てきた。ミヒャと、ルーベンスと、ふたりいる。かなり遠いが、ちゃんと見える。湧きあがる歓声に、にこやかに手を振った。こちらも手を振りかえした。隣のルーベンスは目に入らなかった(申し訳ない…;;)。
まずは舞台中央にて軽くトーク、それから模型のF2003-GAに乗りこんで、レーシングゲームで対戦。イベントそのものは、おそらくこの年の秋にお台場で行われたものと同じだろう。何人かのファンとも対戦したが、ミヒャエルはとにかく下手で、コースオフばかりしていた。ルビーニョはなかなか上手だった。
ゲームのあとはまたトーク。ミヒャエルとルビーニョと、交互に話を聞いていたが、当り障りのない内容ばかりで特に記憶に残ってはいない。強く印象に残っているのは、グランプリの週末に、あのミヒャエルがわざわざイベントブースまで出てきて、ゲームに興じ、トークに応じていたという事実。こんなところでミヒャエルの肉声が聞けるとは、という驚きがとにかく大きかった。
ファンとして、好きなドライバーの姿を拝み、肉声が聞けるというのは、本当に嬉しいことだ。一方で、グランプリ期間中はできるだけ、ファンサービスにかかずらう時間を減らしてレースに集中させてやりたい、とも思う。ファン心理というのは、なかなか難しい。
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