オーストラリアGPの雑記_
March07 2004
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データ参照>>>ATLAS F1
Formula1.com

脱帽。その一言に尽きる。

公式記録によるフェラーリのベストタイムは、ふたり揃って1分24.1秒。ラップタイムの全周平均は27秒台前半とやや精彩を欠くが、これはエンジンを労わって最終スティントで大きくペースダウンしたためで、その前までの平均値では次点アロンソに丸1秒の差をつけた。
よくまあ長年、これだけ高レベルのパフォーマンスを保てるものだ。スピードよりも勝利そのものよりも、常勝と謳われ続けてなお色褪せぬ集中力というか、熱意というか、執念というか、とにかくマラネロ・パワーの持続性には頭が下がる。
継続は力なりと諺になるほどに、ひとつのことを続けるのは難しい。ゆえに、私は彼らを尊敬してやまない。
その気持ちは、接戦を望むレースファンとしての心理とは対極にある。


* ウィリアムズのふたり

スポーツにしろ人生にしろ、風向きや流れというものは存在する。そして風向きや流れが悪い、と俗にいうときには、何をやっても巧くいかなかったり、酷ければ却って悪いほうへと転がっていくものだ。JPMのレースを見ていて、ふとそんなことを考えた。
予選までの流れは決して悪くはなかっただろう。フロントロウは獲れなかったが、チームメイトやマクラーレン勢が軒並み崩れた中、手堅く3番手につけた。フェラーリの出来は群を抜いていたから、本人の言う「失敗」があったにせよ、期待の持てるグリッドだった筈だ。それが蓋を開けてみれば、スタートに失敗、前を遅い車に塞がれて、機転を利かせてピットに入れば作業に手間取る。結局また前を塞がれて、何とか躱してペースを上げたと思いきや、またしてもピットストップでもたつく。まるでチーム内での彼の立場を暗喩しているかに見えた――実際は、どうせ出て行くからといって仕事に影響することはないと誰もが口をそろえて言うけれど。
結局、彼のピットストップ所要時間の合計は、チームメイトに比べて5.671秒も長かった。

片やラルフのレースは纏まった印象を残したが、ひとえにチームメイトのどたばた劇のおかげ。全体的にみてさほど見劣りするラップタイムではないとはいえ、チャンピオンシップを戦おうという意気込みは片鱗も窺えないペースだった。アロンソには完敗しているし、ジェンスを抜いたのもBARのピット作業の遅れに負うところが大きい。
少なくとも結果だけを見れば、ひとまずやれやれといったところか。(チームメイトに勝っただけでも単純な私は嬉しいのですね。)

マシンそのものについていえば、開幕前に予想したほどではなかったものの、昨年の進歩の度合を思えばまだ希望はある。…どこかの某チームに比べればよっぽど状況はまし。今後の活躍に期待するとしよう。


* アロンソか、ルノーか?

フェラーリ2台が別天地を行くなか、アロンソ一人がずり落ちながらもしがみついた。ルノーのマシンは今年もなかなかいける、らしい。しかしヤーノが早々にパーツを壊してしまったため、今回の走りがマシンそのもののポテンシャルの成せる技か、アロンソ自身の努力のゆえかは微妙なところ。
後者の可能性を考えるのは、フラビオが散々、アロンソはミヒャを彷彿とさせると批評するからだ。劣ったマシンの劣った部分を自身の技能で埋め合わせて勝つのは、かつてミヒャの十八番だった。
再来、と目しているわけではない。ただ、前述のような勝ち方は、小気味よくて楽しいから好きなのである。ダビデがゴリアテを斃したような下克上を、元来人間は好むのかもしれない。

LCS疑惑については、今回ルノーが使用したのと同様のシステムはどこも採用しているという話を某筋から聞いた。禁止されたのはクラッチの電子制御であり、今の技術では他のやりかたでホイールの回転をコントロールすることができるとのこと。「ルノーは巧いこと開発したな」と悔しそうだった。
ただ、一抹の不安は残る。ちょうど10年前に、同じようにスタートでライバルを凌いでチャンピオンへの階段を上りはじめたドライバーの姿が被るのだ。あのとき私は純粋にそのドライバーの言葉を信じた。今は疑惑がかなり黒に近かったと思っている。今回は、そうでないことを願う。


* 雑感

BARの成績。日本のメディアが事前にどれだけ騒いだのか知らないが、こんなもんでしょ、というのが私の感想。今回ペースはさほど伸びなかったが、それでも平均ラップタイムはウィリアムズに引けを取らない。見た目、ドライバビリティも向上した。
どんなに躍進しても、優勝はよほど運がなければ無理、今年は表彰台に2、3度上がれば及第点。ただしポイント圏内は確実に獲ってくるだろう。そう予想していたから、6位という結果――ピットストップのロスがなければ4位も可能――は、思っていたよりやりおるな、という印象だった。

ラップタイムに大差がついた原因として、なるほどと唸らされた説。
単なる気温の問題だけではなく、タイヤのマッチングの問題だというもの。ご贔屓を沢山抱えるミシュランに対し、BSはフェラーリ一本に絞ればよかった。去年までは同じ日本勢のホンダが取引先におり、流石に気を遣わざるをえなかった。
開幕前に散々囁かれた、リソースを数多く持つミシュランが有利との通説とはまったく逆を行く考え方で、一理ある。
タイヤの性能(コンパウンド)は今年、チームですら予測しなかったほどに向上したらしい。開幕戦に限らず、ラップレコードを叩きだしまくるシーズンになるかもしれない。

…某チームの某ドライバーについては、今回は敢えてノーコメントということで。


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