ハンガリーGPの雑記
Aug 24 2003
 
 

データ参照>>>ATLAS F1

身勝手は重々承知ではあるが、レース中ずっと余所見ばかりしておいて、終わった後でずんときた。
この春にも実感したことだ。普段ミヒャエルが独走するレースはつまらないと言い切る私だけれど、どこかで勝ちつづけていて欲しいと思っているのだ。最強の王様として君臨しつづけていて欲しいのだ。
結局のところ、心のいちばん奥底を占めているのが誰かという問題なのだろう。
正直に白状しよう、今回私は、今シーズンはじめてミヒャにタイトル獲ってもらいたいと思った。
   
とはいえ、惨憺たる現状はミヒャやチームの所為ばかりでもない。トップ10のうち上位7人がMIユーザーという最終結果は、偶然だけで片づけられまい。
実はこれについては7月頃に、知人から後半戦に関する嫌な予想を聞かされていた。それを踏まえて地上波を見ていて、脇坂選手の発言に目(耳?)が止まった。
「フェラーリは(ウィリアムズに比べて)乗りやすそうなのに、前に進んでいかない」
地上波の情報によれば、今回フェラーリは2台ともハードタイヤを選んだ。ここで又聞き話を披露すると、作戦が一緒だったと仮定するとき、BSのソフトタイヤはMIに比べ磨耗度がぎりぎりなのだそうだ。対するMIは、ハードタイヤですらBSソフトと同じくらいのグリップ力があるという。柔らかいタイヤは路面への食いつきがいいから、縦横の運動に対して耐力がある。つまり、前へ前へと進む力が強い。
これはあくまでイギリスGPの時点での話だけれど、知人はタイヤがラップタイムに及ぼす影響は、だいたい0.5〜1.0秒はあるのではないかと言った。そしてその差は、マシンの性能やセッティングだけでは埋め合わせきれないとも。
もしこれが本当にパフォーマンスダウンの原因だとするなら、この先の道のりはミヒャにとって相当に厳しい。
   
ただ、ミヒャエル流に言えば「運は自分の力で掴むもの」で、実際彼は必要なときに必要なだけの幸運を強引に手繰り寄せてきた。この2年で見る側も楽をするのにすっかり慣れてしまったけれど、思いかえせば、彼の歩む道は常に険しかった。
だから、今回もしなくてはならないことは同じ。人事を尽くして、天命を引き寄せるまでのこと。
純粋な腕で彼を凌ぐ者はまだ、いない。 いつだって、彼は逆境にあって最もうつくしく、最も強かった。だからやはりここはファンらしく、王様の手腕を信じておこうかと。

仇の勢い強く、戦い激しくとも、
勝利は汝が手にあれば、
ゆけや、ゆけ。



 + + +


その他の人たちのことを、少し。

ルノーにとって20年ぶりの勝利、というけれど、私はむしろベネトンを思いだした。
パルクフェルメまで出迎えたフラビオの、ほんとうに嬉しそうな笑顔。自分の見出した才能の開花を目の当たりにして、彼は満足げにわらう。
「まるで同じ映画をもういちど見ているみたい」、そんなフラブ自身のコメントが脳裏をよぎった。
あの頃、何もかもが熱く眩しかった。どきどきしてわくわくしてTVに向かった。
少し、胸が痛んだ。

JPMは非常に効率のいい走りをした。各スティントの入りで、必ず全車中のトップタイムを連発する。他車がそこここで引っかかっている間に、肝心な部分できっちりタイムを稼いで表彰台まで辿りついた。
残り10周でのスピンはご愛嬌。そのへんは誰かさんもやることなので、何も言えぬ。
巷では彼がタイトル争いの最有力候補だというが、そう言いたくなるのも頷ける。今回、いちばん「ちゃんと仕事をした」印象が強かったドライバーだ。
ただし、JPMの走りにはややばらつきがある。あと3戦、今までのコンスタントなペースを貫くことができれば、栄冠は近い。
(といっても私はもう応援してはあげないけれどね。)

ラルフ。
「たられば」は口にしたところで無意味だから、言わない。ペースでは決して負けてはいなかったし、最後尾に落ちての4位入賞は上出来だ。
本当は最後尾なんぞに落ちていたらいけないのだけれど、そのあたりは本人がいちばんよく理解しているから、お疲れさまとだけ。

デイビッド。
予選終了後はいつものように罵倒したけれど、求められた仕事は完璧にこなした。もともと玄人肌の走りが得意なひとだ、心配はしていなかったが、2ストップ仕様の重いマシンでラップタイムはミヒャやヤーノを凌ぐ周回も多かったのには吃驚した。
ここ数戦、彼のレースを楽しめるのが私はなにより嬉しかったりする。来期のシートは確保したとはいっても、未だ正念場であることに変わりはない。
頑張れという言葉は無責任で好きではないのだけれど、敢えて心をこめて告げよう。
頑張れ、DC!

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