ブラジルGPの雑記
April06 2003
 



あれは、はたして『おもしろいレース』だったのだろうか。

F1を見ている気がまったくしなかった。レースが佳境を迎えたと思うまもなく、ペースカーが出動して緊張感をぶっつり断ち切っていく。その度に気分を仕切りなおすのが大変だった。
予測がつかないという意味では、確かに目が離せなかったが、その割にはずいぶんと興醒めな展開でもあった。何度、中途で寝てしまおうと思っただろう。DCに勝利の可能性がなければ、きっと最後まで見たりなどしなかった。
ミヒャエルがどう、とかいうレベルではない。安全面で必要なことは頭で理解していても、興奮に水をさされるのは嬉しいことではない。度重なれば尚のこと。

レギュレーションによるある程度の枠組みは不可欠だけれど、今のF1はとても不自由に見える。狭い檻のなかで羽ばたこうと必死にもがいているような、痛々しさすら感じる。


* 毒皿の奥義。

一緒にJPMがコケてなければ、怒ったかもしれない。しゃーないか、と諦めがついたのは、見るからにアクアプレーニング現象が原因だったから。もっとも、同じ場所を問題なく   またはかろうじて   通過していったドライバーが9人もいるのだから、チャンプでしょ、と言われれば反論はできない。(実際、タイムズのケビン・イアソンには「レインマイスターの癖に」と言われてしまった)
それでも、あのひとの表情を見たら、怒る気が失せた。自分のミスだと、解っていた。ならばいい。コース脇から指咥えて見ていなければならないのが、悔しくて仕方ないなら、それでいい。そう思えているうちはまだ、先がある。

記録はいつか止まるもので、人生、晴天ばかりは続かない。いつでも勝てると無条件に思いこむのは、傲慢だ。落としたのはたった3戦で18ポイント差、この程度でおたつくような繊細な神経じゃ、10年近くもファンやってなんかこられなかった。
長年見てきて、私は彼にそれなりの信頼を置いている。
仮に、最悪の状況を想定してみよう。そのとき自分はファンをやめるのか?信頼を裏切られたと憤るか?そんなわきゃあない。勝てるドライバーだったから好きになったわけじゃない。ミヒャエルだから、好きなのだ。好きだから、信じるのだ。根拠などそれで充分。

ミヒャは持ち直すかもしれないし、あるいは、これこそが凋落の兆しかもしれない。いずれにせよ、時計の針は留まることなく刻まれていく。
どうせ見ていることしかできないのだから、きゃあきゃあ喚かず、静かに待ちましょ。
(以上、あくまで私のスタンス)


* 英国系情報源裏話?

ITVのジェームズ・アレンのレポートが、ちょっとおもしろかった。
▼魔のコーナー
『レース終了後、マーティン(ブランドル)と連れ立って‘クルヴァ ド ソル’(第3コーナー)を見に行った。‘エス ド セナ’の外側から続くスタンドが草の土手の上に聳え立ち、その下に排水溝があった。排水溝はアームコのすぐ裏にあり、あふれた水がその下を潜ってコースに流れこみ、川をつくっていた。まったくとんでもない光景だった。』
『マーク・ウェバーの話では、そこを通るたびにタイヤが滑ってしまい、グリップが完全に失われる一瞬があったという。きっと、その時々の水のあふれ具合が、各ドライバーの命運を決したのだろう。』

こちらが、現場写真→
▼タイヤ
『レインタイヤのシングルスペック・ルールを推したのは、マクラーレンを始めとするミシュラン勢チーム。昨年、MIのウェットコンパウンドがBSに大きく遅れをとったことから、「1種類だけならいいタイヤをつくれる」と考えたのではないか。』
▼アロンソ
『この週末、彼は2度も黄旗を無視している。一度目にドライブスルー・ペナルティを受けたにも関わらず、再び黄旗を見落とした結果、高速でクラッシュシーンに突入してしまった。もしFIAがこの件について彼に厳しい裁定を下したとしても、私は驚かない。1997年の鈴鹿で、黄旗を無視したヴィルヌーヴは、失格になったではないか。そのくらい重大なことなのだ。』
▼ルビーニョ
『彼のマシンのコンピューターは、実際より12キロ多く燃料が残っていると判断していた。テレメトリーも不調だったため、チームはトラブルを発見できなかった。結果、ルーベンスはガス欠でリタイヤする羽目になった。』

最後の件については、ケビン・イアソン(The Times)も触れている。
『フェラーリの広報担当は、日曜の夜遅くまで、釈明に必死だった。公式の見解はこうだ。「給油ポンプがきちんと作動せず、ピットストップ時に予定通りの燃料を積むことができなかった。しかしテレメトリーが不調だったため、エンジニアが‘異常な燃費’に気づかなかった」。言い換えれば、バリチェロはチームのミスによりガス欠を起こして止まった、ということだ。』
チームが足を引っ張ってどうするの、と呆れる一方で、グリーンに停まった赤いマシンに私がほっとしたのも事実。
運気は、こちらを向いてはいないかもしれないけれど、あちらを向いてもいないということ。


はやく、帰っておいで。私の帝王。
あなたの在るべき場所へ。あの高みへ。
至高の座にてあざやかに笑え。

いつまでだって、待っているよ。

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