その眼に、すべてを浚われてゆく。
麻薬のような。
最上級のスピリッツのような。
淫らな興奮剤のような。
それだけでイッちまえる幻覚に溢れて。
俺を、
俺でなくしてゆく。
抗う術もなく押し流されてただその眸に魅入られて、
邪悪なほど純粋な意志の耀きに気圧されて。
穏やかという名の薄紗を透かして閃く野獣の残忍さに酔ってゆく。
凄絶な闘気に犯される背徳の快感。
見る者を呪縛し跪かせる
それは、
聖なる魔性。
……だから、離れたのだ。
すっかり牙を抜かれてしまわぬうちに、チームを出た。
俺だって一人前の獣なのだという証立てのために。
なのに。
いったいどうした醜態だ、これは?
この小一時間というもの、理性を裏切った右手はずっと携帯を弄んでいる。
時計の針が新たな日付を告げるまで、5分を切った。
目を閉じる。
開く。
大きく深呼吸をする。
「…仕方、ねぇか……」
たぶんきっと、もうどうしようもない。
小声でぼやくのと相前後して、右の親指が動いた。
呼び出し音はきっかり二回。
『――もしもし?』
応えた響きに、呪縛の糸がもう一重巻かれたのを感じた。
そうして告げる甘い自虐の言葉。
隷属の、烙印。
「ハッピーバースディ、マイケル」